この香炉は、マック王朝の青灰色の陶器に属し、1588年から1591年頃に製作されました。現在はアンビエン・コレクション( ハイフォン)に所蔵されています。美しいだけでなく、ベトナムの人々の歴史的・文化的メッセージを凝縮した作品です。
アン・ビエン・コレクションの香炉は、高さ41cm、直径23.5cmの円筒形の青灰色の釉薬をかけた陶器で、口は高く広がっており、内側にはマック王朝の芸術に典型的な「鞍」の形をした曲がりくねった龍の像を描いた長方形のパネルで装飾されています。
口元に長方形または正方形の模様が施され、胴体には蓮の花が咲いた模様が飾られています。
この香炉は、ベトナム人が製作した2種類の青銅製ドラムの形状と装飾模様を継承しており、歴史的な意義も持っています。
香炉の下部は、2000年以上前のドンソン鼓の形をしています。 科学者たちはこれまでにも、逆さまに置かれたドンソン鼓の形を発見してきましたが、この香炉は、胴体が明確に3つの部分に分かれ、短い平行線が引かれ、底部に三角形が取り付けられている、逆さまの形状を持つ唯一の香炉です。
香炉の両側には蓮の花模様が施されており、これはムオン太鼓(ヘーゲルII型太鼓とも呼ばれる)の特徴です。ムオン太鼓はドンソン太鼓を継承し、紀元初頭からレ・チュン・フン時代(16世紀~18世紀)にまで遡ります。
首の部分はほぼ円筒形で、蓮のモチーフと渦巻く雲で装飾されており、内側には仏陀(仏教)を意味する「Dai Tu」という文字が刻まれています。
香炉の基部は、胴体が膨らんだドンソン銅鼓の形をしており、蓮の花びら模様、三角形の模様など、ムオン銅鼓の要素を取り入れた装飾的な縁で飾られています。
特に、タンと太鼓の裏の間には、丸い目、コウモリの耳のように尖った耳、そしてコウモリの頭のような鼻と口を持つ四頭の動物像が置かれています。伝説や風水によると、この像は幸福を象徴するとされています。そのため、「Búc(バット)」という音は「Phúc(プック)」という音と結びついています。そのため、多くの寺院や仏塔にはコウモリの像が飾られています。
2本の大きなストラップの外側には、龍の形が浮き彫りにされています。胴体の側面には4本の小さなストラップがあり、それぞれに「Dinh Huong(丁酉)」「Hue Huong(火酉)」「Giai Thoat Huong(大香)」「Giai Thoat Tri Kien ...)」という漢字が浮き彫りにされています。これらはグエン・フォンの念仏の言葉で、人々が仏を崇拝するために焚く線香の煙が、大香の雲となって十方八方、仏教徒のいる場所へと舞い上がることを願うものです。ここで「Huong」という言葉は、徳の香りを意味します。
「ディン・フオン」は、香炉の心が決意に満ち、清浄であることを意味します。「フエ・フオン」は、香炉の智慧が常に澄み渡り、人生の無常をはっきりと見通せるように願うことを意味します。「ジャイ・トアット・フオン」は、生死と輪廻からの解放を意味します。「ジャイ・トアット・トリ・キエン・フオン」は、法を知り、仏の境地に至ることを意味します。
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